気が付くと、サミュエルの目には、見慣れた天井の様子が映っていました。
(え?)
サミュエルは上半身を起こしてみました。そこは、いつもサミュエルが寝起きしている部屋です。ベッドのすぐ横の窓は開いていて、朝の弱い太陽の光と朝の冷たいそよ風とを、呼びいれていました。
(なんで僕は家に帰っているんだろう?)
部屋の戸が開き、姉が入ってきました。
「まあまあ…、冬だというのに窓開けっぱなしで寝たの?」
慌てて姉は窓を閉めました。
「姉さん」
「なに?」
「誰が昨日、僕をここまで運んでくれたの?」
姉はおかしな顔をしました。
「昨日、僕は野原で倒れていたんだろう?」
姉はますます変な顔をします。
「何云ってるの。あなた昨日帰ってくるなりご飯も食べずに真っすぐベッドに入っていたじゃない。今夜は疲れた、とかいって…。覚えてないの?」
サミュエルは、ゆっくりうなづきました。
「まったく、しっかりしてちょうだいよ。夢でも見ていたんじゃない?」
姉はそっけなく云いました。あれは夢だったのでしょうか?
しかし、あれがすべて夢だったとは考えられません。と、いうより考えたくありませんでした。
サミュエルは、ベッドから立ち上がって外を眺めました。
(夢なんかじゃない。〈銀河宇宙の天文台〉は、ちゃんとあそこにあったんだ。あのおじいさんが気をきかせてくれて、わざわざ家まで送ってくれたんだ。そうだよ。そうに、決まってる)
しかし、姉がああ云うので、自信はぐらついてきます。
「ほら、はやく着代えなさい。学校に遅れるわよ」
姉に云われるままに、サミュエルは着替え始めました。
あれは、本当に夢でしかなかったのでしょうか。サミュエルにはどうもしっくりきません。
その日の朝はいつもと変わりませんでした。サミュエルは、姉の用意してくれた朝食を食べながら、いつものように考え事をしました。考えていることがいつもと違いましたが、あとは概ねいつも通りです。
(誰か僕の云うこと信じてくれるかしら? 先生はどうだろう?)
ふと、サミュエルは姉に尋ねました。
「姉さん?」
「うん?」
「姉さんは僕の話、信じてくれる?」
「なあに? 急に…」
「うん…」
サミュエルは口ごもりました。
「ほら、もう時間よ。急ぎなさい。遅れちゃうでしょ?」
姉は時計を気にして云いました。
「じゃ、またあとでね」
サミュエルは、その朝、いろいろな思いを胸に閉まいこんでいつもの通りに学校に出かけて行きました。
晴れた冬の朝のことです…。