『雨あがり』は、初めて人にみせることを前提に書いた作品です。
当時、高校1年か2年でした。
当たり前のことですが、いま振り返ると、稚拙な表現がたくさんみられます。
例えば、「……」がやたらと多い。
いまの私は、極力、この「……」を使わないようにしているのですが、これは、高校時代に多用した反動でしょう。
「……」は、もしかしたら、マンガ世代には抵抗がないのかもしれません。
私もマンガ世代ですから、それで、自然に「……」を多用したのだと思います
しかし、ある作家さん(お名前は忘れました)が、新聞に投稿されていたのを機に、私は「……」を封印しようと決意しました。
その方は、こう指摘しておられたのです。
――その「……」の中に込められたものを、文章で表現するのが、作家の仕事だろうと、思う。
その通りだと思いました。
「……」は、マンガの絵の中に書き込まれるからこそ、威力を発揮するのでしょう。
登場人物の表情や仕草が、明示されていない限り、「……」は、意味のあるメッセージをもち得ない――
そう、いえるのかもしれません。
以後、「……」は極力、用いないようにしております。
他にも、随所に稚拙な点がみられます。
例えば、いわゆる視点がばらついている点です。
『序』と『結び』との間の本編は、基本的には「リュージェ」の視点で述べられているのですが、ときに「兄」にぶれたり、「伯母」にぶれたり、「姉」にぶれたりしています。
当時は、視点の固定に、頓着ありませんでした。
にもかかわらず、この作品を、ここに公開する気になったのは、意外な方々からのご好評を得たからです。
十代後半の女性が、
「こういうお話、好きです」
と、いってくれました。
いま思えば、基本は少年の視点で書いているので、若い女の人には興味のある物語になったのかもしれません。
残念ながら、作者の計算外でした。
ちなみに、高校時代の男性の同級生からの評判は、最悪でした。
一言でいえば、「無視」――
他の作品はコメントしてくれたのに、この作品については、誰もコメントを寄せてくれませんでした。
いまでは、何となく、その理由もわかりますが。
いずれにせよ、この作品は、良い意味でも、悪い意味でも、私の出発点です。
今後の糧にするために、ここに公開しておこうと思います。
なお、読まれた方は、すぐにお気づきのことと存じますが、『序』と『結び』とは、最近になって、大幅に加筆した箇所です。
あきらかに、本編と文体が違います。
このような文体は、10代の私には、考えつきもしないスタイルでした。