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2005年11月30日 (水) |
格言は矛盾するか？ |
――腕のよい職人はミスを道具のせいにしない。
という。
一方、
――職人たる者、道具には金をかけよ。
という。
（矛盾してるよなー）
と思っていた。
――腕のよい職人は、道具が劣悪でも、ミスはしないものだが、職人なら、道具には金をかけるべきである。
というふうに解釈していたからである。
が、今日、道を歩いていて、ふと思い当たった。
（別に矛盾してないか）
と――
つまり、
――腕のよい職人は、道具にもキッチリお金をかけるから、ミスを道具のせいにするなど思いもよらぬはずである。
ということだと思う。
一般に、格言の類いには、たいてい、それに相反する内容のものが存在する。
それが、メッセージをわかりにくくさせることがある。
――二度あることは三度ある。
と、
――三度目の正直。
との組み合わせも、そうだろう。
これも、
（矛盾してるよなー）
と思っていたのだが、
――何か悪いことが二度も続けば、三度目も起こるものだ。
と、
――人は努力すれば、三度目で初めて成功することがある。
と、というふうに分けて解釈すれば、
（別に矛盾してないか）
と思えてくる。
格言の類いは、よくよくかみしめた上で解釈しないといけない。
＊
で――
一応、僕は物書きの職人を自認しているわけだが、多分、道具には金をかけていないほうである。
かけた方がいいな。
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2005年11月29日 (火) |
出来損ないを読んでいく |
今日は朝から晩まで小説を書く。
高校の頃に夢にみた生活である。
けれど――
さすがに疲れた。
小説を書くというのは、読むことでもある。
しかも、相手は出来損ないの小説である。
書いている途中なので、出来損ないである。
出来損ないを読んでいく。
書いて読み、書いて読んでは、書いて読み――
そうやって延々と読んでいく。
（自分の小説じゃなかったら、やってらんないな）
と思う。
そのうちに、自分の小説であっても、
――やってらんないな。
と、なるらしい。
とある作家さんがエッセイに書いておられた。
（そうかもなあ〜）
と思う。
小説は、ネタを考えているときが面白いのであって、いったん書き始めてしまうと、
（うおおー！ 早く書かねば忘れてしまう！）
との脅迫観念に悩まされる。
忘れてしまうくらいなら、大したシーンではないはずなのだが……。
多分……。
とにかく――
早く書き上げ、スッキリしたい。
＊
ちなみに――
いま書いている小説は長編である。
とてもネットでおみせできるような分量ではない。
ネットでおみせしなくてもいいように、頑張って書いているわけで――
出版までいくと、いいなあ。
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2005年11月28日 (月) |
敬服した |
今朝、何気なく新聞を読んでいたら、
――携帯メールのやり取りに心が癒される。
といった主旨の投書が目に付いた。
（たしかになあ）
と妙に納得――
ともすれば、携帯電話に依存したコミュニケーション不全の弊害を指摘したくはなるが、今となっては、それも古臭い発想かもしれなかった。
携帯電話でのメールのやり取りには、独特の共時性が伴う。
それが人の心を癒すのだろう。
驚いたのは、その投書の書き手である。
90歳の女性であった。
（ふほー！）
と思った。
90歳にして、今風の文明の利器にキッチリ適応していらっしゃる点が素晴らしい。
僕も60年後に、そんな風でありたい。
多分、無理だろうけど――
投書の最後の一節が胸を打った。
――携帯メールを上手に活用し、残された僅かな時間を、前向きに生きていきたい。
とある。
敬服した。
こんな一文をサラッと綴れるような胸中を、人は、どうやったら手にできるのだろう。
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2005年11月27日 (日) |
他が小説に追いついてきた？ |
小説を、映画やTVドラマ、マンガ、TVゲームなどと比較し、
――小説は、いかにあるべきか。
ということばかりを考えてきたが――
先日、全く違う発想を知った。
映画やTVドラマ、マンガ、TVゲームのほうが、小説に近づいてきている、という発想である。
近づいてきた理由は、技術の猛烈な進歩だ。
映像や作画やコンピュータの技術が猛烈に進歩したために、近年、小説みたいな映画、小説みたいなTVドラマ、小説みたいなマンガ、小説みたいなTVゲームなどが登場した。
そうした映画やTVドラマやマンガやTVゲームなどは、以前は存在しなかったということである。
（なるほど――）
と思った。
案外、そうかもしれない。
小説の歴史は古い。
日本の『源氏物語』を最古の小説であるとする考え方をとれば、小説の歴史は実に一千年である。
他のメディアが、近年の技術の進歩に助けられ、小説に追いついてきたという発想は、それなりの説得力を帯びている。
もちろん、表層は大いに違う。
小説と映画と、小説とTVドラマと、小説とマンガと、小説とTVゲームと――どれも全く違う。
が、物語を伝えるという目的は同じであろう。
手法レベルの具象的な違いを、一つひとつキチンと弁えていれば、それらは皆、同じものだとみなすこともできる。
小説の書き手が、映像や作画やコンピュータを敵視する必要は全くないということである。
とはいえ――
手法としての小説をキッチリと理解しないうちは、敵視するくらいが、ちょうど良いのかもしれない。
いたずらに映画的だったり、TVドラマ的だったり、マンガ的だったり、TVゲーム的だったりする小説は、やはり読んでいてつらい。
小説の書き手に向けられた教則本が、巷には溢れている。
それらは、しばしば矛盾しているように思える。
例えば、映像に引っ張られた小説を書くなとする一方で、映像から学ぶことも多々あるとする論調である。
うっかり読みとばすと混乱をする。
が、そうではない。
どちらの考えも正しい。
そこに矛盾はない。
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2005年11月26日 (土) |
言葉のゾンビ |
日本社会には、
――ものいえば唇寒し
の風潮がある。
江戸期の封建体制が培ったもの、との見方が一般的のようだ。
それ以前の日本では、雄弁が肯定されていた。
戦国期などは、有能な人材であっても、話す能力が駄目なら、軽くみられたらしい。
江戸期以降、寡黙が雄弁に勝る、と考えられるようになった。
為政者側の都合だったのだろう。
封建時代では、やむをえない。
が、その風潮が今も残っている。
困ったことである。
とはいえ――
こうした風潮は、よかれと思っていったことも悪意に解釈する輩がいるうちは、決してなくなりはしないだろう。
悪意に解釈する輩をこそ糾弾すべきだと思うのだが……。
言葉は一人歩きする。
だから、注意が必要である。
無責任な発言者が言葉を一人歩きさせるのは仕方がない。
自業自得である。
が、言葉の一人歩きに振り回されるほうにも問題はある。
言葉は特定の文脈で発せられる。
文脈が無視されれば、言葉は意味を失う。
少なくとも生気の意味を失う。
生気の意味を失い、死んでしまった言葉に、再び、何かの意味をもたせるためには、新たな文脈を付与せざるを得ない。
言葉の一人歩きに振り回される人は、そこで自分勝手に文脈を付与し、死んだ言葉を生き返らせてしまう。
言葉のゾンビを作り上げている。
自分で作り上げたゾンビに苦しむ人は多い。
僕も、ときに苦しむ。
が、大抵のゾンビは、オリジナルの発言者と直に向き合うことで退治できる。
その退治を怠ってはならない。
怠る人は、もっと糾弾されていい。
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2005年11月25日 (金) |
素敵なインサイダー |
1、2年前のこと――
尊敬する方が、ご講演の中で、
――インサイダーよりアウトサイダーのほうが、何となく素敵な感じがするじゃないですか。
というようなことを、おっしゃっていた。
いわんとされたことはわかったつもりだし、共感できなかったわけではないのだが、
（本当にそうかな？）
と、思ったことも事実である。
インサイダーというのは、例えば、組織の中央に分け入って、組織のことを隅まで把握しており、ときに組織を完全に牛耳ってしまうような人のことである。
アウトサイダーというのは、組織の周縁にいて、組織の体質になじめず、ときに、組織の皆から異端視されるような人である。
素敵なアウトサイダーがいれば、そうでないアウトサイダーもいる。
素敵なインサイダーがいれば、そうでないインサイダーもいる。
だから、一概にはいえないと思うのだ。
概して、素敵なアウトサイダーが多く、そうでないインサイダーが多いということなら、納得できる。
今日の社会を見渡すと、インサイダーが役得ばかりを貪り、きちっと役目を果たしていないケースが目立つようである。
素敵なインサイダーとは、どういう人か、という問題提起である。
僕は小説などで、しばしばヒーローないしヒロインに、アプリオリなアドバンテージを与える。
簡単にいえば、主人公を、どこかの王族の生まれにするとか、地方の名家の生まれにするとか、そういった設定を多用する、ということである。
そういう設定を安易に多用すると、物語は陳腐になりやすい。「素敵でないインサイダー」を量産することになりかねない。
そこには工夫を要する。「素敵なインサイダー」に仕上げるために、様々な仕掛けを施す。
物語の世界をいじってみたり、事象をいじってみたり――
素敵なインサイダーの必要条件とは、どういうものか。
インサイダーでありながら、アウトサイダーの視点を忘れない――そういうことではないかと思っている。
組織の論理にドップリ浸かりながらも、常に組織を外から冷徹に眺める目を養っている人である。
そして、ときがきたら、組織を自壊させることも厭わない人である。
幕末期の勝海舟が、近いかもしれない。
最後の将軍・徳川慶喜も、そうであろう。
厳密にいえば、勝はアウトサイダーよりだ。
慶喜はインサイダーよりだろう。
多分、2人を足して2で割るのが、ちょうどいい。
この種の覚悟――つまり「組織を自壊させる」の覚悟――が、素敵なインサイダーには必須の要素に思える。
組織の論理にドップリ浸かりながら、同時に組織を根こそぎに始末する覚悟である。
危うさといってもいい。
もちろん、手前勝手に始末するような人は困り者である。
組織の存在意義が十分に残っているのに、組織を維持できないようでは無能である。
が、いつも組織の維持に汲々とするようなインサイダーは、魅力にかける。
存在意義を失った組織に余計な延命をもたらす愚を犯す。
問題なのは、そうした素敵なインサイダーが持つ危うさは、平時においては、なかなか表に出にくい、ということだ。
だから、小説では平時でなくしてやればよい。非常時の世界、非常時の事象を起こして、素敵なインサイダーの魅力を引き出してやる。
素敵なインサイダーとは、そういう人たちのことだと、僕は思っている。
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2005年11月24日 (木) |
ちょっぴりエッチな |
今日、様々なメディアで、
――ちょっぴりエッチな――
みたいなコピーを目にすることがある。
（ちょっぴりエッチって何なんだよ！）
と思う。
僕の経験上「ちょっぴりエッチ」は大抵の場合は「エッチ」ではない。
例えば――
マンガなどで、女の子がスカートの裾を抑えながら、男の子に向かって、
――このスケベ！
と、悪態をつくようなシーンである。
この場合は、ほのぼのとした雰囲気が売りである。
つまり、「ちょっぴりエッチ」に「エッチ」は期待できないということだ。
中学・高校生の頃は、この「ちょっぴりエッチ」に随分だまされた。
――こんなの、全然エッチじゃないじゃん！
である。
大学生くらいになると、「ちょっぴりエッチ」が「エッチ」でないことの面白さに、興味がいった。
いわゆるシモネタに抵抗がなくなってきたのも、この頃だと思う。
「ちょっぴりエッチ」のコツは、露骨な言葉を使わないことである。
暗に生殖器を指すような隠語などは御法度だ。
酒の席で、この法度が破られたために座が白けることは、よくある。
「ちょっぴりエッチ」の維持にはボキャブラリーを要する。
工夫に乏しいシモネタは、みっともない。
猥褻がネタだからみっともないのではない。
節度ある大人の知性が感じられないから、みっともない。
「ちょっぴりエッチ」は猥褻の対極にある。
もちろん、だからといって、その価値が損なわれるものではない。むしろ、そこに価値を見い出せる。
「ちょっぴりエッチ」は「エッチ」に浸るためのものではない。
人の「エッチ」を突き放しつつ、甘んじて受け入れるためのものである。
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2005年11月23日 (水) |
小説の矛盾 |
小説は本来、極めてパーソナルなものなのに、作者は小説世界をユニバーサルなものにしようと画策する――
そこに小説の最大の矛盾があるらしい。
とある作家さんの随筆に出たくだりである。
記憶を頼りに書いている。嘘をいっているかもしれない。
それを読んだときに、僕は、
（たしかにな）
と思った。
僕は十代の頃、自分の小説世界を、いかにユニバーサルなものにするかに躍起になっていた。
ユニバーサルとは、普遍的くらいの意味で、もう少し平たくいえば、
――それらしさがある。
ということだった。
リアリティがある、と言い換えてもいいかもしれない。
少なくとも三人称で小説を書くときは、そうであった。
いかに「それらしさ」を出すかについて考えたときに、真っ先に思い付いたのは、文体の脱個性化である。
――誰が書いても、こうなるでしょ？
というような文体を多用するのである。
が、これをやりすぎると辛くなる。
文体を脱個性化させれば、ある程度はユニバーサルになるかもしれない。
が、小説とは本来、どうしようもなくパーソナルなものである。
よって、いずれは折り合いが付かなくなり、撃沈する。
少なくとも僕はそうだった。
で、次に考えたのが、文体の個性化である。
文体を個性化させるには一人称で書くのが手っ取り早い。奇特なキャラクターを考えだし、そのキャラクターに喋らせれば、とりあえず文体は個性化させられる。
が、これもやり過ぎは駄目である。
人に理解されなくなる。
書いている本人の自己満足で終わってしまう。
そうならないときも、あるにはあるが……。
というわけで、小説は難しい。
小説は、本来、極めてパーソナルなものなのに、どこまでもユニバーサルな振りをしなくてはならない。
一人でシコシコ書いていれば、いずれは書き上がってしまう、という点も見逃せないだろう。
パーソナルは小説の宿命といってもよい。
他方、小説が小説として成り立つためには、多少なりとも読者の存在を要求する。
押し入れの隅にしまわれた原稿は、日の目をみない限り、ただの殴り書きと同じである。
少なくとも書いた本人以外にとっては、そうである。
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2005年11月22日 (火) |
選挙に出る感じ |
自分が難なくやってきたことは、他人に教えるのが難しい。
僕は、気付いたら物語を作り、文章を書いていた。
だから、
――どうやったら物語を作れるのか？
――どうやったら文章を書けるのか？
と訊かれると、弱い。
（え？ どうやって……っていわれても……）
である。
自分ができることほど、教えるのは難しい。
そのことは、子供の頃から、何となくわかっていたことだった。
僕は運動が駄目である。
駆けっこは、いつもビリから2番目とか3番目――
さかあがりができたのは、皆から遅れること数年だった。
自分ができないことを、皆は、さも簡単そうにやる。
そんな同級生たちをみて、
（なんで、できるのか？）
と思ったものだった。
が、誰も、
――こうすれば、できる。
とは教えてくれなかった。
教えられなかったのだと思う。
今なら、わかる。
跳び箱も苦手だった。
皆が飛べるような低い箱が跳べなかった。
中学2年のときに、当時、3年生を教えていた体育の先生が印象に残っている。
ムラマツ先生といった。
20代ないし30代の男の先生で、ネチネチと小言をいったりしない陽気な先生だった。
僕はムラマツ先生に教わったことは一度しかない。
代行でこられた1回ぽっきりの授業である。
跳び箱の授業だった。
僕が、あまりにも跳べないので、数分だけ個人レッスンになった。
――思い切りが大事だよ。
と、先生はおっしゃる。
――ちょうど、選挙に出る感じ――
と、いわれた。
（は？）
と思った。
「選挙」というのは、生徒会の選挙である。
僕は学業が良かったので、大した人望もないのに学級委員をやった。
中学1年のとき、生徒会の選挙に出て演説みたいなことをした覚えがある。
ムラマツ先生は、そのことを覚えていて、その日まで話したこともなかった僕に、
――選挙に出る感じ――
と、おっしゃったのである。
――生徒会の選挙に出るような子は、普通、運動もソツなくこなすけどねえ。
などという陰口を叩く先生もいたらしい。
だから、勉強をしているときや生徒会で活動しているときの僕と、運動をしているときの僕とを、全く分離して指導するような先生もいた。
それの垣根を、ムラマツ先生は、あっさり取り払った。
体育の先生である。
跳び箱なんて、ご自分では悠々と跳べるようになられたに違いない。
それを跳べないヤツがいる。
そのくせ、勉強はできて、生徒会活動なんかもやっている。
――不思議なヤツがいるもんだ。
と思って、とっさに思い付かれたのが、
――選挙に出る感じ――
だったに違いない。
当時の僕にしか通用しないアドバイスだった。
結局、跳び箱を跳べるようにはならなかったと記憶している。
多分、僕はムラマツ先生をガッカリさせた。
が、先生はガッカリしたお顔をみせなかった。
――また今度な！
みたいなお顔だった。
今の僕は、当時の先生と同じくらいか、歳上である。
副業で、教える仕事もやっている。
とても真似はできない。
凄い先生だったと思っている。
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2005年11月21日 (月) |
奇妙な縁 |
今の住まいに引っ越したとき――
最も近所のコンビニは、大通りの向こう側にあった。
引っ越して1年くらい経つと、大通りのこちら側にもコンビニができ、さらに1年くらいが経つと、大通りの向こう側のコンビニは潰れていた。
10年が経っている。
大通りの向こう側のコンビニを潰したコンビニは、今も健在である。
オーナーは、中年の男性だ。
背が高く、痩せている。
陳列商品は厳選し、少しでも無駄を抑える術に長けている。
僕が弁当を買うと、何もきかずに電子レンジで温める。
おにぎりを買うと、何もきかずに、そのまま袋に入れてしまう。
僕の癖を見抜いている。
彼が僕の意に反したことは一度もない。
ときどき、近所の通りで、すれ違う。
10年の付き合いである。
挨拶をしても、良さげなものだ。
が、それをしない。
挨拶をした瞬間、僕は彼のコンビニに行きづらくなる。
多分、彼も、それを知っている。
だから、互いに知らん振りとなる。
奇妙な縁だと思っている。
はたして、いつまで続くのか。
終わるときは、さっさと終わると思っている。
あとで思い出すこともないだろう。
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2005年11月20日 (日) |
本は、いつ死ぬか |
本を整理した。
読み終わっている本――
読み終わっていないけど、もう読まない本――
まだ読んでいない本――
まだ読んでいないけど、もう読まない本――
という具合に、である。
整理して改めて思ったが、「もう読まない」と決めた本の、なんと多いことか――
もっとも、「もう読まない」からといって、それを、例えば古本屋に売りに行こうとは思わない。
そう思う本もあるけれど、僕の場合、それは僅かだ。
本は、いつ死ぬか、という話がある。
一般には、絶版になったり、事実上、絶版になったりしたときを「本の死」とする。
業界的には、それが自然だろう。
では、読者にとっては、いつが「本の死」だろうか？
やはり、
――この本、もういらない。
と思ったときが、そのときだろうと僕は思う。
逆にいえば、「もう読まない」と決めても、「もういらない」と思うわけでないのなら、その本は生きている。
その読者にとっては、まだ生きている。そういうことである。
本を整理する度に思う。
我が家の本は、かなり生きている。
死にそうにみえても、生きている。
僕が物書きを志しているということが大きいようだ。
物書きをやるのでなければ、とっくに死んでいるような本がゴロゴロある。
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2005年11月19日 (土) |
結婚式帰りの人々 |
夕食を取ろうと近所のレストランにいったら、若い人たちで溢れていた。
若いというのは、二十代、三十代くらいということである。
皆、なぜか堅苦しい格好をしている。
座席の脇には、幾つもの紙袋が置かれていた。
それで、結婚式帰りの人々だとわかった。
＊
結婚式というのは、厄介である。
結婚後、何年が経っていようと、夫婦に危機は訪れ得る。
式が盛大であれば、あるほど、
――この夫婦は大丈夫だろうか？
なんて、つい余計な心配をしてしまう。
だから、結婚式の列席者は、少なからず、ストレスを抱えてしまうのだと思う。
結婚式帰りの人々が妙に、はしゃぐのは、そういうわけではないか。
誰にも罪はない。
結婚という事象がもつ根源的な危うさに起因することである。
結婚にはゴールがみえない。
男女が夫婦になって、何を目指すのか？
これといったゴールがみえないのである。わかりやすいゴールがみえない。
だから、危うい。
その点、葬式は違う。
誤解を恐れずにいえば、葬式は安心である。
――生き返ったりしないだろうか？
なんて、心配をする必要はない。
葬式は人生のゴールである。
それだけで価値がある。
一人の人間が精一杯に生きた証が、葬式である。
盛大でなくてもいい。
簡素な葬式でも、いいではないか。
列席者が数名でも、いいではないか。
式の規模だけで、その人の人生の価値を推し量るのは、愚かなことである。
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2005年11月18日 (金) |
茶目っ気のあるヤツ |
僕の部屋のエアコンは、放っておくと、夏は暖房、冬は冷房に切り替わりたがる。
先日も冷え込んできたので、暖房をいれたつもりが、冷房になっていた。
リモコンの表示はちゃんと「暖房」になっている。
なのに、部屋は一向に温かくならない。
（壊れたんかな？）
と思いつつも、スイッチを入れ直してみたら、
――なんて温かいんだ
である。
例によって、冷房になっていたようである。
まあ、いいけどね。
要は、リモコンの表示が、あてにならないということである。
本体の表示も、あてにならない。
除湿機能が稼働しているときは別表示になるのだが、冷房機能や暖房機能が稼働しているときは同じ表示なのである。冷房のときも暖房のときも同じランプがついている。
つまり、今、冷房なのか暖房なのかはリモコンしか教えてくれず、そのリモコンが、たまに嘘をつくわけである。
なかなか茶目っ気のあるヤツだ。
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2005年11月17日 (木) |
鼻炎が悪化した |
久々の掃除で埃を吸い込んだせいで――
鼻炎が悪化した。
昨夜から、咳やクシャミ、鼻水が酷い。
ちゃんとマスクして厳重に警戒したのに、どうしたわけか――
うーむ。
考えるだけ損だな……。
自業自得である。
今までサボっていた自分が悪い。
が、鼻炎のほうは笑い事ではなかった。
クシャミを連発しすぎて、腰まで痛めてしまった。
踏んだり蹴ったりである。
＊
体調が悪くて横になっているときに限って、物書きをやりたくなる。
面白いアイディアが次々と浮かび上がってくるものである。
まあ、面白いというのは気のせいかもしれないが……。
そういうときのアイディアは、短編小説向きのものが多い。
――そんなバカな！
みたいな荒唐無稽なアイディアである。
小さな女の子が巨大な男を肩車する話とか……。
あ――
今は適当なことを書いた。
とにかく、それくらい荒唐無稽なアイディアである。
こういうアイディアは、ベッドでウンウン唸っているときだから面白いのであって、ノートPCの前でウンウン唸っているときは物の役に立たない。
寝ながら考えることが自動的に筆記されるような機械が発明されるといいのに……。
もっとも、あとで推敲するのは大変かな……。
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2005年11月16日 (水) |
僕が掃除をやめたわけ |
今日は久しぶりに部屋を掃除した。
ほこりが舞って、すごいのなんのって……。
自業自得である。
ほとんど掃除してこなかったのだから……。
＊
東京にいた頃は、週に一度は必ず掃除機をかけるようなタイプだった。
毎回、家具を動かすほどの入れ込みようだった。
いつから、しなくなったのか――
大学受験を終え、仙台にきてからも、1年くらいはコマメにやっていたように記憶している。
やめたきっかけは、大学の試験勉強であった。
燃え尽きたのである。
僕の専攻は医学だった。
医学の試験というのは、恐ろしく退屈である。少なくとも僕の受けた試験は、そうである。
基本的には、小・中学生の勉強である。
本やノートに書かれてあることを整理し、覚えるだけだ。
そこが悩ましかった。
理学部や工学部にいった友人たちが、高級な数式を相手に格闘しているのをみると、
――なんてチャチな勉強なんだ。
と思った。
特に物理学や数学には興味があったので、なおさらだった。
そのくせ、試験範囲の広さは半端ではない。
たまに、
――大学に入るまでは、よく勉強をした。
という言葉をきくが、僕の場合は大学に入ってからのほうが、よく勉強をした。
勉強の量が段違いだった。
朝起きてから夜寝るまで、飯や風呂のとき以外は勉強をした。
――1日何時間くらい勉強するの？
などと訊かれる。
わからない。
勉強時間を気にするという発想が消えてなくなるくらい、勉強をした。
本当は、
――勉強をさせられていた。
が正しい。
勉強の質は悪くなった。
大学に入る前のほうが、入った後よりも丁寧に勉強をしていた。
やりたくて、やっていたわけではない。
そうしなければ、単位が取得できず、卒業できないと思ったから、やった。
やらざるを得なかった。
だから、僕は必要最低限の勉強しかしていない。
週1回の掃除ペースを乱されたのは、この試験勉強である。
こうした試験期間が、1ヶ月以上続く。ときには半年近く続くこともある。
その期間の掃除は無理である。
――掃除をしている暇があれば勉強しなきゃ！
である。
試験が終わると、燃え尽きた。
もし僕が掃除好きなら、イソイソと掃除に取りかかったろう。
が、あいにく掃除は嫌いである。
試験が終わってホッとしているところに、わざわざ嫌いなことをやる気にはならなかった。
とどめを刺したのは、母の言葉である。
――掃除をしなくても死にはしない。
だった。
意外だった。
そんなことをいう母は珍しい。
それで、僕は掃除をしなくなった。
試験期間に集中して勉強したわけは、試験が暗記一辺倒だったからである。
試験の3ヶ月前とかに勉強しても、役には立たない。
大筋は覚えていても細部は忘れてしまう。
試験前になって、細部を詰め込むために、もう一度、勉強をやり直す必要がある。
時間の無駄である。
もし試験が暗記一辺倒でなかったら、どうだったろう？
もっと丁寧に時間をかけて勉強をしたことだろう。
僕は、そういう勉強なら苦にならない。
喜んで勉強していたかもしれない。
クラブ活動もアルバイトも、ほとんどやらなかったかもしれない。
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2005年11月15日 (火) |
タクシーで無駄話 |
タクシーの運転手さんには、概して無愛想である。
が、たまに饒舌な人がいる。
驚くほど饒舌である。
僕はタクシーを利用するほうだ。
自転車で片道20分の距離を往復する代わりに、行きをタクシーでいって、帰りは歩いて帰ってくる、ということをよくやる。
昨日も、事情があって自宅近くでタクシーに乗った。
行き先を告げると、
「……ははあ。そこだと、ここを真っ直ぐいって、○○町で右折したほうがいいですかね」
提示されたルートは裏道だった。
「そちらのほうが、すいてるんですか？」
と訊くと、
「そうですね。平日ですしね――あるいは、□□通りで右折するという手もありますが……」
「どちらが渋滞にかかりにくいでしょう？」
「○○通りを右折するほうですね。私、車庫が▽▽なんで、いつもこの道を通るんですが、大抵、渋滞にはなりませんね。信号には引っかかりますけど……」
よく喋る運転手さんだった。
ルート決めのあとは、映画館である。
「この映画館、どうなってるんですかね。こんなに小さいのに、七つも八つも上映しているそうですよ――昔は、よく映画にいきましたが、もう何十年もいってませんね。今は、どうなってるんだか……」
亡くなった父は、
――用もないのに喋りかけてくるタクシー運転手は面倒だ。
などと、もらしていた。
わからないでもない。
仕事で急いでいるときに、世間話をもちかけられるとウンザリすることはある。
が、
――そんなに急いで、どこにいく。
とも思う。
タクシーに乗っている間くらい、世間話に興じるほどの余裕はもっていたい。
そのほうが幸せな気がする。
僕は、よくお喋りに応じるほうである。
ちなみに――
お喋り好きな運転手さんが、いつも本領を発起するとは限らない。
タクシーの拾い方による。
特段のタクシー乗り場というわけではないところで、暇そうにしているタクシーをみつけたら、コツコツとガラス窓をノックしてみる。
――ちょっくらゴメンよ。
といった調子で、目で合図する。
こうして拾ったタクシーでは、大抵の運転手さんが上機嫌である。
同じことを駅前の大通りなどでやると、巧くいかない。
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2005年11月14日 (月) |
今までにみたことがないベースボール |
――今までにみたことがないベースボール（base ball）
を期待すべきなのだと思う。
プロ野球アジア・シリーズをTV観戦し、そう感じた。
アジア・シリーズとは、中国、台湾、韓国、日本のプロ野球のチャンピオン・チームが東京に集っての優勝決定戦である。
初めての試みだ。
親善が目的ではなく、どこが最強かを決める真剣勝負という位置付けである。
昨日は決勝戦であった。
予選を1位で通過した千葉ロッテ・マリーンズに、予選を2位で通過したサムスン・ライオンズが挑んだ。
千葉ロッテは日本プロ野球のチャンピオン・チームであり、サムスン・ライオンズは韓国プロ野球のチャンピオン・チームである。
結果は 5ー3 で千葉ロッテの勝利――
日本プロ野球のチャンピオン・チームが、初代アジア・チャンピオンの座を勝ち取った。
試合の模様はTVで生中継された。
試合開始から終了までの完全生中継である。
プロ野球の試合の完全生中継はTV地上波では滅多にない機会だ。
わざわざ予定を開けてTV観戦した。
＊
スポーツにナショナリズムは無用だと思っている。
プロスポーツの国際大会を観戦するときは、ナショナリズムから自由でいたいと思っている。
が、どうしてもナショナリズムが絡んでしまう。
昨日も、そうだった。
――韓国には負けられないでしょう。
という気持ちである。
野球の場合は、日本が先輩格である。
そういう意味での「負けられない」ではあったが、根っこの部分では、やはり純然たるナショナリズムが幅をきかせていた。
スポーツにナショナリズムを持ち込むと、究極的には面白くならない。
とくにプロスポーツの国際大会では、そのスポーツの今までにないスタイルが披露されるときに盛り上がり、国威の発揚が重視されるときに白けるものである。
最近の韓国野球は、日本野球に近づいている。
韓国が日本を手本と認めているということである。
もちろん、日本を手本にする理由は、日本に追いつき、日本を乗り越えるためである。
日本の野球を吸収し、独自に進化させ、今までにない野球を確立するために、韓国は日本を手本とする。
日本も同じことをやってきた。
アメリカの野球を吸収し、独自に進化させ、今までにない――アメリカにはなかった――野球を確立した。
それを今、韓国が取り入れようとしている。
野球は、元来「ベースボール」と呼ばれていた。
それが日本や韓国に伝わり、「野球」となった。
台湾や中国では「棒球」という。
それでいい。
韓国野球、台湾棒球、中国棒球――
各々が独自のベースボールを探ればよい。
そうした独自のベースボールの進化ないし分化を目の当たりにする場が、国際大会である。
スポーツ先進国が、スポーツ後進国を打ち負かして大喜びする場ではない。
が、そのような意味でのナショナリズムから、僕は自由でいられたであろうか。
答えは、否である。
来年のアジア・シリーズでは、是非、そのようなナショナリズムから自由になっていたいと思う。
今までにみたことがないベースボールが披露され、日本のプロ野球選手やプロ野球ファンが目を丸くするようなアジア・シリーズであって欲しい。
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2005年11月13日 (日) |
人を教え、導く |
人を教え、導くということに携わるようになってから11年となる。
21歳のときに、学習塾で講師を始めた。
大学のトイレに貼ってあった「講師募集」の広告をみて電話をかけた。
ちょうど、こんな季節――初冬――のことだったと記憶している。
3ヶ月後には、大学に入って初めての本格的な試験期間を控えていた。
その前にアルバイトを始め、さっさと、なじんでしまおうと思っていた。
人を教え、導くということが、どういうことか、わかっていなかった。
わかっていれば、そんな時期に、
――さっさと、なじんでしまおう。
などと発想することはなかった。
わかっていないことに気付くのに、長い年月を要した。
成果を出すのには、時間はかからなかった。
高校生相手の大学受験指導である。
僕は大学受験の勉強は、かなり徹底的にやっていたので、そういう意味では成果を出しやすかった。
徹底的にやっていたというのは、僕自身が高校の勉強につまずいたからである。
そのつまずきを是正するためには、普通に学ぶだけでは足らなかった。基礎から徹底的に学び直そうとする意識改革が必要だった。
書物に書かれていることや人が説明していることを厳密に理解し、根源から吸収することの癖が、このときについた。
少しでも曖昧な点が残ると納得ができなかった。
そういう性格になっていた。
だから――
高校生相手に、難しいことを、わかりやすく噛み砕いて教えるには、うってつけだったといえる。
――先生の説明をきくと、頭が良くなった気がする。
と、高校生たちは褒めてくれた。
が、この時点で、僕は、人を教え、導くということの意味がわかっていなかった。
数学の苦手な男子高校生がいた。
彼を、僕は1年生のときから教えていた。
彼は進学校の努力家で、3年生になる頃には、全国で十指に入る大学の模擬試験判定が「B」だった。「合格率60％〜80％」ということである。
が、彼は、その大学を受験しなかった。
子供の頃から行きたがっていた大学を受験し、入学していった。
宗教的な理由があったと理解している。
卒業のとき、彼は他の講師に、こう語った。
――学校の数学の評定が「3」から「5」に上がったのが嬉しかった。
評定が上がったのは、僕に教わったからだという。
僕は、彼の数学の評定のことなど眼中になかった。
いかに有名大学に合格してもらうか、そればかりを考えていた。
だから、僕はガッカリした。
――学校の評定くらいで喜ぶなよ……。
である。
が、そうではない。
僕は、もっと喜ぶべきだった。
いや――喜べないといけなかった。
彼が「嬉しい」と思えることを達成できたことが、僕の喜びになるようでないと、いけなかった。
それが、人を教え、導くということである。
僕が、彼の喜びを自分の喜びと感じるまでには、なお数年の歳月を要した。
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2005年11月12日 (土) |
肉の脂身 |
子供の頃は肉の脂身が大嫌いであった。
たまの外食で、立派な肉料理などを食べるときに、肉の脂身に当たると、
「うぇえ……！」
などと、戻したりもしていた。
それが、今では大好物である。
脂身を噛み締めたときに滲み出る脂汁が、たまらない。
子供の頃は、なぜ、あんなに毛嫌いしていたのだろう？
多分、味を嫌っていたのではなく、歯触りを嫌っていたのだと思う。
プニョっとした堅さに耐えられなかったのだろう。
あのプニョっとした堅さを噛み破ると、口の中の脂汁が溢れ出て幸せな気分に浸れるのだが……。
肉の脂身が嫌いだった時分に、それを母にいうと、母は喜んだ。
――あんなもの、食べないほうがいい。
というのである。その傍らで、
――美味しいけどな。
と、父は首を捻っていた。
健康を考えれば、肉の脂身など食べないほうがいい。
子供のときから食べすぎれば、不要な生活習慣病を招きうる。
とはいえ、たまに食べるくらいは構わないだろう。
父は、多分、そういうことがいいたかった。
それから十年以上がたった数年前のこと――
今では脂身が大好きだというと、母は呆れ返った。
――嫌いのままでいればよかったものを……。
ということである。
あのプニョっとした堅さを噛み破る瞬間が心地よいのである。
その術を学んだことが、運の尽きであった。
とはいえ――
自分の皮膚の内側にも、あの脂身はこびり付いているわけで……。
肉の脂身を喜んで食べるようになってから、10kgは太った。
それを思うと気分が悪い。
とも食いしている気分である。
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2005年11月11日 (金) |
時間の流れを遡る |
今日は朝から深夜まで予定が詰まっていたので、夕食は、かきこんで食べる慌ただしさだった。
おかげで、胸やけがする。
（胃腸に負担をかけると跳ね返ってくるようになったんだなあ）
と実感――
少なくとも十年前は、いくら無茶な食べ方をしても平気だった。
（もう、あの頃の胃腸には戻れないんだなあ）
と思い、歳月の残酷さを思う。
もちろん、たかが飯のことである。
残酷さは、ほんの切れ端でしかないけれど――
＊
四十歳や五十歳を過ぎた人が、
――最近、やけに時間の流れが速くなってきた。
というのを耳にする。
（多分、そうなんだろうなあ）
と思う。
自分のことを振り返っても、十代や二十代と比べれば、時間の流れは速く感じられる。それも、やけに速い。
四十代や五十代になったら、どうなるか、想像に難くない。
この、どうしようもない時間の流れに一瞬だけ抗うには、どうしたらいいか？
時間の流れを遡る物語に浸ってみると、よいことがある。
タイムマシンがあったり、未来人が現代にやってきたりする物語である。
＊
時間の流れを遡るというのは――
今の経験を保ったまま、過去を追体験することだ。
喩えるなら、稼いだお金を貯金したままバカンスに出かけ、さらに現地でお金を稼ぐようなものである。
夢のような話ではないか。
例えば――
十年前の自分に戻って、こう言い聞かせる。
――十年後は胃腸も丈夫でなくなっているから、今のうちに、せいぜい無茶食いを楽しんでおこう。
虫の良い話である。
今の自分にとっても、十年前の自分にとっても、虫の良い話である。
そうと、わかっていながら、つい浸ってしまう。
だからなのか――
時間の流れを遡る物語は根強く人気がある。
そして――
そうした物語に浸ったあとで、時間の流れの残酷を思う。
より一層、強く思う。
時間の流れを遡る物語は、概して後味が悪い。
少なくとも僕はそうである。
たとえ、その物語に、どんなに感動しても、必ずや、何らかの苦味が残る。
二日酔いの苦味である。
――あんなに飲まなければ良かった。
という類いの苦味である。
時間の流れを遡ることは決してできない。だから、苦い。
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2005年11月10日 (木) |
つまらなければ、すぐやめる |
本をよむ行為というのは、結局のところ、その本をよもうとする自我と、その自我が自己の内に込めている心象との間に生じる相互作用にすぎない。
相互作用というのは、
――互いに影響を与えあうこと
という程度の意味である。
同じ本をよんでも、人によって様々な相互作用が生じ得る。
どのような自我が、どのような心象を自己の内に込めているかで、相互作用の有り様が変わってくるからである。
だから、
――この本、つまんねえ！
などと不用意に罵ると、とんだ恥をかくことがある。
――あんたの自我がおかしいか、あんたの自我が自己の内に込めている心象がおかしいか、それだけのことさ。
と、蔑まれ得る。
僕は、本をよみはじめて、つまらなければ、すぐにやめてしまう。
世の中には、一度よみはじめたら最後までよみとおすことを心掛けている人も少なくはないが、僕は、その立場をとらない。
理由は、
――だって、いい相互作用が生じないんだから、しょうがないじゃん！
ということである。
決して、
――この本はデキが悪いから、よむに値しない。
ということではない。
つまらないのは本ではなく、相互作用のほうである。
その本をよもうとする自我と、自我が自己に込めている心象との相互作用である。
相互作用がつまらないのに、無理に時間をかけてよみとおして、何の意味があろうか？
もちろん、無理をしている間に自我が変化し、つまらない相互作用が面白い相互作用に変化するのかもしれないが、僕の経験では、そんなことは希である。
――とりあえず、よみとおした。
という自己満足しか得られない。
というわけで――
僕は無理に本をよむことはしない。
よみたいときに、よみたいだけ、よんでいく。
つまらなければ、すぐやめる。
そうしている。
＊
そうやって、よむのをやめた本の中に『遠野物語』がある。
民俗学者・柳田国男の代表作だ。
今日、自室の古書を整理していたら、埃にまみれて出てきた。
10年ほど前に買ったものらしい。
パラパラとよみかえしてみる。
今は、それほど、つまらない相互作用ではなさそうだ。
折りをみて、目を通してみようと思う。
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2005年11月9日 (水) |
女性に化ける |
僕は、女性を主人公にした物語が大変に好きで、子供の頃から、そんな物語の小説をよんだり、かいたりしていたのだが、ずっと、
（僕は男なのに、なんでこうなんだろう？）
と、疑問に思っていたりもした。
――疑問に思う。
というよりも、
――恥ずかしく思う。
というほうが正しい。
とりわけ子供の頃は、そうであった。
女の子が男の子に化けるのは構わないが、その逆は堪え難い――と考えるものなのである。
これは多分、僕だけではなく、少年の多くは、そうだろうと思う。
最近になって、色々な人たちから、
――あなたは女性的な感性をもっている。
といわれることが多くなって、多少その自覚も芽生えてきたので、今では、
――恥ずかしく思う。
よりも、
――不思議に思う。
となった。
僕は、別に女性になりたいとは思わないし、男に生まれてきてイヤな思いをしたこともないし、今日まで恋愛感情は女性にしか抱いたことがないし、男を好きになってしまった経験もない。
にもかかわらず、例えば、小説を書かせると、決まって女性を主人公にした物語を紡ぎ出す。
不思議である。
いったい、どうしたわけなのだろう？
とりあえずの答えは、
――男を主人公に小説を書くと小説じゃなくなってしまうから。
である。
これは本当である。
男を主人公にすると、虚構を維持するのが大変だ。
女性を主人公にすると、楽である。
そもそも、僕は男なので、女性の視点をとった時点で、すでに虚構性が立ち上がるからである。
でも――と思う。
女性になりきって、女性の視点で、例えば随筆みたいなものを書いてみたいと思うことも、ないではない。
その場合は、男が書いているということを隠し、さも現実の女性が書いた随筆にみせかけて書く、ということである。
読者を欺くということである。
女性に化けてみたいということなのであろう。
念のために書き添えておくと――
女性に化けるのは、あくまで書き言葉の範囲で、である。
別に女装しようとは思わない。
女性に男装させようとは思うけれど――
なのに――
なぜ、僕は女性に化けたがるのだろう？
不思議だ。
全くわからない。
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2005年11月8日 (火) |
つい使ってしまう |
お金は持っていると使ってしまう。
困ったものである。
だから、なるべく持たないようにしているのだが、ほとんど持っていないようなときでさえ、つい使ってしまうから恐ろしい。
今日、別のことにお金を使い、ほとんどスッカラカンの状態になって――
本屋に入った。
今時、珍しい零細書店である。
中途半端に時間が空いていた。
その隙間を埋めるためだけに入ったのである。
ところが――
そこで、面白いタイトルの本を発見――
（うーん！ これは小説に使える！）
と直観するようなタイトルだった。
……ので、即、購入――
本当にスッカラカンになってしまった。
ちょっと後悔――
（別に今、買わなくてもよかったよなあ〜）
ということである。
単なる衝動買いでなかったと言い切れるかどうか……。
うーむ。
時間の隙間を埋めるときは、僕の場合、本屋にだけは入らないほうがいいようだ。
どうしても入るときは、スッカラカンで入る。
そうしないと危ない。
＊
ちなみに、本のタイトルは内緒である。
小説のネタにする可能性は、今も残っている。
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2005年11月7日 (月) |
泣いて、笑って |
義弟は五木寛之さんを、よむらしい。
妹からきいた話である。「義弟」というのは、妹の夫である。
それで、五木さんの『生きるヒント1――自分の人生を愛するための12章』（角川文庫）を購入――
早速、よんでみた。
これを選んだのは、中学生の国語の教科書に引用されていたからである。
（中学生によませる「生きるヒント」って何なんだよ）
と思った。
なるほど――
これは凄い。
親しみやすい文体で、かつ出だしからグイグイ引っ張る。
「自分の人生を愛するための12章」の最初の章は『歓ぶ』である。
歓ぶことの大切さが説かれている。
歓び上手になることが人生を前向きにする鍵の一つだ、ということだ。
その通りだと深く頷いた。
人生は悲しみに満ちている。
そんな人生においては、歓びだけが灯明である。
不意に思い出されたのが、辛島美登里さんのアルバム『果実』（1997年）であった。
今のところ、僕が聴いたことのある中で、辛島さんの最高傑作は、この『果実』だと思っている。
歌声が泣いているのである。
そして、笑っている。
とりわけ、5曲目の『アゲイン』と6曲目の『あなたの愛になりたい』との繋がりが素晴らしい。
辛島さんは『アゲイン』で泣いた後、『あなたの愛――』で微笑むのである。
泣き疲れを癒すかのように微笑んでいる。
五木さんの『生きるヒント』の第1章『歓ぶ』では、
――人はみな泣きながら生まれてくる。
という一節が紹介されている。シェイクスピアの『リア王』での一コマである。
人は、生の苦しみを味わい、やがては死ぬためだけに、この世に生まれてくる――そういう解釈である。
生まれるときだけでなく、生まれた後も、人は基本的には泣いているのかもしれない。
辛島さんの『アゲイン』は失恋の歌だ。
が、五木さんの『生きるヒント』をよんで、これを聴くと、
――生の苦しみに泣いている。
とも感じられる。
そして、笑うのである。
次の6曲目の『あなたの愛――』で、辛島さんは、そっと微笑む。
生の歓びが感じられる。
五木さんの『生きるヒント』は、よさそうだ。
少なくとも僕の好みには合いそうだ。
そう思った。
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2005年11月6日 (日) |
十七年後のメッセージ |
三日前は、父の命日だった。
亡くなって4年が経つ。
父は神経解剖学者だった。
生涯にわたって、大学人を通した。
大学院を卒業し、即、母校の教員となった。
以後、文字通り死ぬまで、大学の教員だった。
僕が物心のついたときは助教授だった。
中三のときに、恩師の退官に伴い、教授選挙に立候補した。
政治向きには関心がなく、生真面目に学究に邁進していた。
だから、すんなり教授になれると思っていた。
結果は落選――
当時、僕は高校受験に備え、塾通いをしていた。
帰りは遅かったので、職場帰りの父が迎えにきてくれていた。
その帰りの車の中で、
――今は落ち込んでいるけど、そのうちに立ち直るから――
と、いわれた。
幼かった僕には、その言葉を受け止める力はなかった。
父親から、そういう言葉を、ききたくはなかった。
あれから十七年が経ち、
（オヤジも随分、思いきったことを口にしたものだ）
と思っている。
息子に、そんな決意表明をする必要はない。
黙っていても、すむことである。
事実、その数カ月後に他大学の教授選に出て、勝った。
が、父は間違っていなかった。
十七年後の息子は、その言葉を覚えている。
その言葉の意味を、たしかに察知している。
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2005年11月5日 (土) |
辛島美登里さんの『そばにいたい』を |
辛島美登里さんの『そばにいたい』をかけてみた。
車の中で、である。
あらためて感じた――この人の声には弦楽が合う。
10月26日のリリースである。
3年ぶりくらいだったらしい。
ブランクを危ぶむ声もあったようだが、辛島さんの音楽は健在だった。
＊
辛島さんの音楽を全く聴かなくなった時期があった。
25歳からの4年間である。
つまらない理由だった。
――当時、付き合っていた彼女が、嫌いだったから――
である。
意外だった。
辛島さんは女性に人気がある。
よく訊くと、単純な「嫌い」ではなかった。「私とは感性が合わない」ということであった。
だから、彼女の前で聴くことは避けてよかったのだが、一人でいるときまで避ける必要はなかった。
――あなたって、本当に音楽を聴かないよね。
と訊かれた。
そりゃ、聴かなくなりますよ。
付き合っている女性に「私とは感性が合わない」とか、いわれればね。
＊
彼女と別れてから、辛島さんの音楽を、ぼちぼち聴くようになった。
が、作品を買うというところまではいかなかった。
『そばにいたい』は、7、8年ぶりに買ったものである。
一度、離れると、その価値を再認識するのに時間がかかる、ということであろうか。
その間に、CDショップから辛島さんの棚が消えていた。
買い続けなかったことを後悔している。
僕が買い続けていれば消えなかった、などといえるわけはないが……。
新古書店で買えることは知っている。
が、それでは辛島さんサイドに一銭もわたらないし……。
ネット購入かな。
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2005年11月4日 (金) |
内からの排除 |
人の上に立つ者には2種類ある。
生まれながらに立てる者と、立つことを学んだ者と、である。
もちろん、3種類目がある。
人の上に立てないのに立とうとする者、あるいは、立っている者である。
立てない者が、立てないことを自覚し、立つことを学ぶ分には、心配無用である。
短気を起こさず、気長に待っていれば、そのうちに人の上に立てるようになるかもしれない。
が、立てないことの自覚がない場合は、かなり厄介である。
ときには排除することも必要であろう。
ただし、強引な排除は禁物である。
荒技は何も生み出しはしない。
対話を繰り返し、その人を内から変えていく――それが正攻法だろう。
内からの排除である。
対話が拒否された場合は、どうするか？
仕方がない。
逃避する。
ときには保身も大切である。
逃避も許されない場合は、どうするか？
その場合は排除だろうな――外からの排除である。
かくして、人の世は争いが絶えない。
悲しいことは、しばしば対話のステップが飛ばされるという事実である。
対話を繰り返し、その人を内から変えていくことの大切さが無視される。
たしかに、対話は面倒臭い。
が、対話を飛ばすと、もっと面倒臭いことになる。
対話を平気で飛ばす人は、そのことを知らない。
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2005年11月3日 (木) |
喧嘩するほど仲がよい？ |
――喧嘩するほど仲がよい。
というが、
（あれは嘘だよな〜）
と思っている。
喧嘩できないくらいに険悪な仲よりは仲がよい――という意味だと思う。
険悪な仲では、喧嘩にもならない。
――喧嘩するだけ損である。
と、お互いが思うからである。
よく、コメディータッチのラブストーリーで、主役級の男女の「仲良く喧嘩するシーン」をみかける。
が、いつだって喧嘩をやっている当人たちは、決してラクではないはずである。
それを傍でみていて、
――仲がいいね〜。
などといっている脇役は、多分、無責任のそしりを免れない。
一種の願望の発露にすぎないと思うわけである。
ま、レトリックとしては成り立つけどね――
というわけで、
――喧嘩するほど仲がよい。
は嘘だと思う。
喧嘩をしない――喧嘩の原因がみつからない――それを「仲がよい」というべきであろう。
ただし――
傍目には喧嘩をしているようにみえても、当人たちには全然その気がない、ということはある。
その場合は本当に仲がよいのだろう。
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2005年11月2日 (水) |
物書きは、かくあるべし |
僕は、この人と同い年で、小説書きを自任しているのに――
この人を知らなかった。
全く知らなかった。
杉原爽香（すぎはらさやか）である。
＊
1988年、15歳でデビュー
2005年現在、32歳――
逆算すれば、1973年生まれ、となる。
15歳のときから、なぜか毎年、殺人事件に巻き込まれる。
5年前に結婚――
夫は殺人事件の犯人として服役した経験をもつ。
32歳の今は〈G興産〉というところで、新しい時代の老人ホームを目指す〈レインボー・プロジェクト〉のチーフを務めている。
＊
……と、まあ、ここまで書けば――
事情を知らない方でも、彼女が物語の登場人物であることが、おわかりだろう。
読者と同じ時を流れる小説の主人公である。
初巻『若草色のポシェット』から最新巻『枯葉色のノートブック』まで、15年もの間、杉原爽香というヒロインを通して描かれ続けているミステリーだ。
作者は、かの大家・赤川次郎さん――
――赤川次郎は女・子供の読むものだ。
などと浅薄な意見を耳にすることがあるが、こんな企画を世にとえる作家は、大家である。
文豪といっても、さし支えあるまい。
現代の文豪である。
先日、赤川さんが新聞のインタビューに答えて仰っていたことが印象に残っている。
――書くことが好きでないと、物書きはつとまらない。
つまり、金もうけを考えるなら物書きにはなるな、ということである。
超売れっ子作家の言葉だけに、説得力がある。
少なくとも御本人は、書くことが何よりもお好きなのだろう。
新人賞の審査なども手掛けられるそうだ。
が、
――恐いと思った若手はいない。
とのこと――
当たり前である。
この人を脅かせるような才能など、そうは出てくるまい。
赤川さんの凄いところは、肩の力を抜きつつ、さりげなく人生を語っている点にあろう。
『杉原爽香シリーズ』などは好例だ。
あれが人生論でなくて、何なのか――
が、それをライトタッチのミステリーで仕上げてみせるところが、赤川さんの真骨頂に違いない。
＊
『杉原爽香シリーズ』を知ったとき、
（理想の物語だ）
と思った。
揺れた。
慄然とした。
物書きは、かくあるべし、と思った。
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2005年11月1日 (火) |
歩きの効用を享受するためには |
最近、よく歩くようになった。
いいことだ。
歩くということは、思考の充実に繋がる。
少なくとも僕の場合は……。
もちろん、健康にもいいに違いない。
適度に体がポカポカする。
夜もグッスリと快眠である。
ただし、一つ難点がある。
――時間がかかる。
ということ――
気付くと夕暮れだったりする。
（ウオー！ あれをしなきゃいけなかったのに！ これもしなきゃいけなかったのに！）
となる。
何とかお手軽に歩けないものだろうか？
極めて短時間で、である。
とはいえ、1分や2分では、歩いたうちに入らないし……。
そもそも「極めて短時間」では、思考の充実など望むべくもない。
歩くとは、すなわち、時間を贅沢に使うことである。
（スローライフでいく）
と割り切らない限り、歩きの効用は享受しずらいのではないか。
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